道東の旅(10)


■■ 九日目:晴れのち曇

 道東の旅もいよいよ終わりに近づいた。気に入った虹別のキャンプ場は、4泊もしてしまった。体はすっかり早起きに慣れたが、キャンプ用の筋肉はすっかり鈍ってしまったようだ。それでも、手伝ってくれる大人が一人増えただけで、随分楽なような気がする。
 長逗留と言うこともあって、テント2つ、スクリーンテント、タープ、物干しロープと、すっかり根付いてしまった。居心地が良かった。今度来るときは、西別川で釣りをしてみたいものだ。キャンプ場を出るときには、親しい人と別れるような気分で一杯だった。

「グッパイ!虹別」

 今回のメーンの一つ、霧多布湿原は他に寄るところが増えて、かなりの遠回りになり、時間的に無理なので諦めることとした。

 車は、釧路に向かう391号線を南下。調度、釧路湿原の東側を通ることになる。
途中、達古武オートキャンプ場を覗いてみる。湖の前でカヌーなどあればおもしろうそうだ。湖という名の沼で大きなザリガニが捕れるらしい。
達古部オートキャンプ場釧路湿原
 釧路湿原で一番の景勝地と言われる、細岡展望台につく。少々の高台で、湿原を広く見渡せる所だ。釧路湿原は4度来ているが、いつも国道を素通りしていて、しっかり見てみたかった。しかし、展望台からは、国立公園である理由はついに感じられなかった。
やはり、ここはカヌーなどで、間近に自然を感じたり、湿原の成り立ちや、その自然の事前知識を勉強して、体験することに価値があるのだと思う。ここ一カ所しか見ていないのではっきり言えないが、湿原らしさを眺めるのなら、霧多布の琵琶瀬展望台の方が、太古の原野の様子をコンパクトに見られるので、お勧めする。

 正午に釧路市内に到着する。駅前の和庄市場で買い物。調度、市場のお祭りで賑やかだった。店の海産物を眺める。ものは良さそうだが、決して安くはない。みんなで、たくさん買って、値切るのがいいだろう。一通り店を回って、どうやら厚岸産の牡蠣が、市価に比べて随分安かったので、20個を1000円で購入。ついでに発泡の箱に氷を入れてもらった。本日の夕食のメーンになりそうだ。

 釧路を後にして、38号線を東上する。途中道の駅「しらぬか恋問」による。相当混んでいる。スタンプを押して直ぐに出発。左手に太平洋の波を眺めながら、走る。本州の低気圧の影響で、波が高い。車は、帯広の手前の幕別町にはいる。ここは「パークゴルフ発祥の地」なのだ。
幕別パークゴルフ場
由緒正しいコースを探すのはもう時間がないので、道路地図に載っている、コースに行くこととした。早速、プレイすることにする。コースは河川敷の平坦なコース。しかし、以外と戦略性がある。地元の前のパーティー
の打ち方をみれば、そのおもしろさが解る。

 2コース回ると時計は4時半になっていた。この時間でも日差しが強く、プレイ後のアイスが、たまらなくおいしかった。次は忠類村のナウマン像記念館だ。ここは無料でナウマン象の骨格が見られる情報を得ていた。それから、道の駅「忠類」には「わさびソフト」がある。味はわさびの風味と辛さが「効く」程に入っていて、「試しに」一口としてお勧めする。ナウマン象記念館は時間が遅かったので見学はやめることとした。

 ここから、本日の目的地、カムイコタン農村公園キャンプ場まで、20キロ程だ。着く頃には、少し暗くなっていた。管理人さんがまだいてほっとする。ここは山側の新設サイト、管理棟前のサイト。川沿いのサイトとなっている。一番便利なのは、管理棟前だが、お勧めはなんと言っても、川沿いのサイトだろう。トイレや炊事場は、管理棟前まで遠いが、「日本一の清流」になった、歴舟川が目の前を佇む。それ以外のサイトは、ちょっと性格の違った「もの」と言う印象だ。

 なぜだか、一番いい場所と思われるところが空いていたので、二カ所確保する。もう遅いので、テントだけ設営して、食事の準備を進める。それでも、当然、ご飯を炊く。ご飯が炊けて、食べやすいようにおにぎりを作っている間に、和庄市場で買った大きなほっけを焼く。七輪からはみ出てしまう。醤油を多めにたらして、みんなでつつく。「うまい!」

次は牡蠣だ。殻ごと網の上に載せる。蓋が開けば、貝柱にナイフをいれて、片方の殻を外す。程良く火が通れば、順番待ちしている、皿の上に置かれる。殻を持って、残り汁と一緒に牡蠣を頬張る。まるで海のエキスを飲んでいるようだ。
子供達も何度もこの味を知っているので、待ちかまえている。グルメの両親もこの味には驚いたのか、絶賛してくれた。
そうそう!、この味には、冷えた白ワインが似合うでしょう。きりりとしたお酒もいいですが、2つ目3つ目と、
よりおいしく感じさせるのはワインだと思います。

 道東最後の夜は、絶賛の海鮮バーベキューでした。「これで星空が見られたら」なんて言うと、罰が当たります。

 寝る前、小雨が時よりぱらついたので、一応タープを張って寝ることとしました。

■ 十日目:雨
 起きると、空は曇ですが、気持ちのいい朝です。昨日着いたときは川面を見ることが出来なかったので、早速行ってみました。
「なんと静に流れているのでしょう」静に、そしてゆったりと流れていました。足元の川岸には小さな魚が見られます。簡単に手ですくい取れるようです。
川の水で顔を洗ってみました。
「なんて気持ちいいのだろう」。続いて起きてきた子供達に「川の水で顔を洗っておいで、気持ちいいよ」と言いました。

 先にテントを片づけていると、小雨が降ってきました。天候が悪くなりそうな気配なので、朝食を取らずに、撤収することとしました。そう決めたとたん、あめはだんだん強くなりました。タープの下で準備はしますが、積み込む順番もあるので、なかなか効率よく行きません。でもこの様なときは、みんなで助け合い、連携して作業するので、それはそれで楽しいものです。

 撤収が完了し、キャンプ場を後にしました。今日は誰よりも早い撤収でした。天気は「雨、雨、雨」でした。車の窓から見える、雨の十勝の平原もまた「おつ」なものです。

 日勝峠を越え、夕張の山々を越え、正面に札幌の背後の山が見える、石狩平野に出ると、「あー戻ってきた」という心境です。そのころには雨は上がり、曇り空です。道の駅「マオイの丘公園」では、地元の農産物が露店で安く売られています。主婦二人はすっかり、家の買い出しモードです。
 方向は同じですが、ここで両親の車と別れることにしました。お互いの疲れをねぎら
い、お互いの旅の思い出に感謝して、それぞれの家路につきました。